こんにちは、くまねこです。
今日はちょっと真面目なテーマ、「精神疾患への差別」について、書いてみます。
ブログを読んでいる多くの人は心理学や精神疾患について学んでいる方が多いのかな、と思います。
そして、心理学や精神疾患を学ぶ中で、向き合わざるをえないことの1つとして、「精神疾患への差別」などの倫理の問題がありますよね。
自分個人としては、これらのテーマをきいたときに、「失言が許されない重いテーマだ」という印象を受けます・・・。正直、ブログに書くことも、ちょっと躊躇してしまいます。
ただ、これらを書いてみようと思った理由として、
最近大きな事件などで容疑者が精神疾患だったとニュースで報道される機会があり、いよいよ、これらのことと向き合わざるをえないかな・・・という感情を、自分の中で持った、ということがあります。
精神疾患については、比較的近現代まで多くの偏見の歴史があります。
最近でも、こういったニュースを見聞きすると、精神疾患がとても恐ろしい病気だと、感情的にインパクトを受ける方も多いのかなと思います。
一方で、専門家の方々や、見識のある方々が、そういった偏見について事実をベースに、ニュートラルな意見を述べてくれたり、と、SNSが発達したからこその、多様な情報発信もできている現代です。
私たち臨床心理士は心の専門家として、精神疾患の正しい知識を伝えることや、その前にまず自分たちが、この事実と向き合ってみることも重要かなぁ・・・と思い、今回はブログに、まとまりなく、自分の意見や実際の事実などを書いてみようと思いました。
1.なんで偏見が起こる?
まずは、なんで偏見が起こるのかを、考えてみようと思います。
私がこういう理由があるかも・・・と思ったことをまとめてみますね。
①精神疾患に対する知識不足
一番はこれじゃないかな、と思います。
専門的に勉強している人や実際に精神疾患で苦しんでいる人以外は、ほとんど精神疾患について学ぶ機会がないのではないでしょうか。
ただ、最近は専門家の方々などの発信も多く、自分で学ぼうと思えば、学ぶ環境自体は整っているかとも思います。
ただし、自分が精神疾患を患ったり、身近な人がそうであったり、、、という状況でなければ、興味を持つのも、やはり難しいのでは?とも思います。
例えば、以前の職場で強迫性障害のクライエントが来た時に強迫行為(意味もないのに同じ行動を繰り返してしまうこと)を行う場面がありました。
私たちは、強迫性障害について勉強しているので、このクライエントさんを少しでも楽にさせるにはどう支援したらよいかと考えます。
ただし、その光景はやはり、最初に見た人にとっては、「異常な行動」「ちょっとショッキングな光景」として映りかねないとも思います。
また、統合失調症の患者さんも時々「電波が飛んでいる」「宇宙人がやってくる」といった、現実離れした言葉をいうことがありますが、統合失調症について知らない人からすれば、「頭がおかしくて危険な人」という考えを持ってしまうかもしれまん。
病気を持っているので、普通と乖離しているという点で、異常ではあるのですが、それが「差別=劣っている、病気を持っている人は悪だ・・・など」といった考えにつながってしまうと非常に危険かと思います。
②メディアの発信
大きな事件が起こると、ほとんどのメディアで事件について報道があると思いますが、その伝え方にも偏見の原因があると思います。
例えば、事件を起こした人が何らかの精神疾患を持っていて通院していたという情報が大々的に報道されると、皆さんはどう思うでしょうか。
ほとんどの人は「精神疾患の人は危険だ」という考えを持つかもしれません。
また、犯罪者の多くは精神疾患だ、という考えも持つかもしれません。
③感情的な判断に偏ってしまうこと
もう一つは、人間なら誰しもが持つ、感情的な部分かと思います。
人は誰しも、主観的に世の中を見ることが、少なからずあります。
統計的に見ると、精神疾患の人だけが犯罪を起こしているわけではないけれど、一回の報道の感情的なインパクトが強すぎて、より偏見が助長されてしまうことがあるのではないかと思いました。
ただし、一度感情的になったとしても、それに反する報道や、精神疾患への正しい知識など、理性や知識によって、一定の枠をつけ、より事実に基づいた判断を統制することは、できるようになるとも思います。
このように、自信をいちど省みる機会があれば、感情的なインパクトを緩和することもできるかと思います。
2.偏見を持つことは悪いのか?
そして、今一度、考え直してみたいことがあります。
それは、「偏見を持ってしまうことは、悪いことなのか」ということです。
人は誰しも、人を第一印象で判断したり、主観的、感情的な情報を頼りに、世の中をみていると思います。
直感的に、「なんかこの人怖い」「近づきたくない」などと、思うことは自分を守る為にも、生きていくためには必要なセンサーだとも思います。
このように、ある部分で感情的なインパクトによって判断をすることは、仕方のないことですよね。
ただし・・・
一方で、それをすべて受け入れてしまっては、世の中は恐ろしい世界になってしまうという事実もあります。
精神疾患だけではなく、年齢、性別、学歴、職業、結婚の有無、優秀かどうかなど。。。
(そんな理不尽な世界で生きていく自信ない・・・。そして、倫理的にも絶対に許されない。)
なので、
偏見を持ってしまうことは仕方がないけれど、それを省みることは絶対に必要なことなのではないか、と思います。
聞こえは良くないかもしれませんが、ある意味、「きれいごとを言い続けること」が重要なのかもしれません。
3.事実をみてみる。実際はどうなのか?
偏見を持ってしまうことは仕方がないけど、省みることが、重要。
そして、省みる機会があることが重要、と思います。
そのなかで、良い題材になってくれるのは、「事実」、「さまざまな立場にある人の意見」、「当事者の意見」・・・など、多角的な情報かと思います。
これから紹介する統計もその一つかなと思います。
【例えば、事実はどうなのか?】
近年、精神疾患の方が犯罪を起こした、という報道がよくありますが、実際に検挙される人数はどのくらいなのでしょうか。ちょっと事実をみてみます。
毎年法務省が出している「犯罪白書」によると、令和元年における精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者をいう。)による刑法犯の検挙人員と,検挙人員総数における刑法犯の検挙人員総数のうち、精神障害者等の比率は1.0%だったそうです。
この結果をみると、「99%の人が精神障害を持っていなかった」ということになります。
もちろん、精神障害を持っていても、医療や支援につながらなかったというケースもあると思いますが・・・。
例外はあるにしても、一概に精神疾患=犯罪者と結びつけるのは違うのではないか、とも思います。
4.色々と考えてみて
今は精神疾患の支援について様々な本が出たり研究が進んできたことから、誰もがその気になれば、昔と比べると情報が集めやすくなっているとも思います。
専門家である私たちも日々勉強し、「自分の中の偏見と向き合うこと」「正しい知識を発信していくこと」は、必要なのかな、と思いました。
難しいテーマですが、今回書いたことが答えでもないと思います。
このテーマは、これからも引き続き、専門家として悩み続けていくことが大切かな、と思いました。