こんにちは、くまねこです。
今回は、公認心理師を目指す方なら聞いたことがあるかもしれない、「Gルート批判」についての記事を書いてみようと思います。
そもそもですが公認心理師資格は、資格が発足して間もないため、受験資格には8つのルートがあります(結構複雑です)。
その一つである、区分Gいわゆる「Gルート」が資格発足以降、twitter界隈を中心に特に批判されてきました。(理由としては、大学や大学院で心理学を専門的に学んでおらず、かつ心理職の経験が浅い者でも、提出書類がそろえば受験資格が得られてしまう、という条件の甘さから)
そして今年で公認心理師試験は第5回を迎え、Gルートの経過措置が終了しました。Gルートの受験者は、今年が最後のチャンスだったみたいです。
約4年ほど続いた、そして今後も続いていくかもしれないGルート批判について、よい悪いはさておき、今さらながら事実確認をしてみようと思います。
1.Gルートとは何か。まずは事実確認をする。
以下、公認心理師の試験や資格登録の運営組織である日本心理研修センターHPから引用した情報です。
こちらは、公認心理師の資格取得までの各ルートをまとめた図と、その下は各区分の説明です。
ややこしいですが、頑張ってみていきましょう(細かい話苦手・・・)。
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公認心理師を受けるには、区分A~Gの8つのルートのいずれかを通過することになります。それが以下の通りです。
【各区分の取り決め】
◆受験区分A
(法第7条第1号)
大学及び大学院で、施行規則第1条及び第2条で定める科目を修めて卒業及び修了
◆受験区分B
(法第7条第2号)
大学で、施行規則第1条で定める科目を修めて卒業、かつ、施行規則第5条で定める施設で2年以上実務を経験
◆受験区分C
(法第7条第3号)
文部科学大臣及び厚生労働大臣が区分A及びBに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定
◆受験区分D1
(法附則第2条第1項第1号)
平成29年9月15日より前に、大学院で施行規則附則第2条で定める科目(科目の読替えあり)を修めて修了
◆受験区分D2
(法附則第2条第1項第2号)
平成29年9月15日より前に大学院に入学し、同日以後に施行規則附則第2条で定める科目(科目の読替えあり)を修めて大学院を修了
◆受験区分E
(法附則第2条第1項第3号)
平成29年9月15日より前に大学に入学し、施行規則附則第3条で定める科目(科目の読替えあり)を修めて卒業(又は履修中)し、平成29年9月15日以後に大学院で施行規則第2条で定める科目(科目の読替え対象外)を修めて修了
◆受験区分F
(法附則第2条第1項第4号)
平成29年9月15日より前に大学に入学し、施行規則附則第3条で定める科目(科目の読替えあり)を修めて卒業(又は履修中)し、かつ、施行規則第5条で定める施設で2年以上実務を経験
◆受験区分G
(法附則第2条第2項)
平成29年9月15日に、法第2条第1号から第3号までに掲げる行為を業として行い(又は業務を休止・廃止してから5年以内)、①文部科学大臣及び厚生労働大臣指定の現任者講習会を修了し、かつ、②施行規則附則第6条で定める施設で5年以上実務を経験
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これをみるとわかるように、確かに区分C、区分Gでは
大学または大学院で心理学を勉強していなくても受験資格を得られることがわかります。
ではなぜ、区分Gは批判され、区分Cは批判されないのか?
その点について区分Cは、「文部科学大臣及び厚生労働大臣が区分A及びBに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定」という点が条件に含まれています。受験資格をクリアするためには、大臣の認定が必要です。(しかし、周りに区分Cで受けた人がおらず、通過基準の詳細は不明。ごめんなさい・・・)
一方で、区分Gでは、「①文部科学大臣及び厚生労働大臣指定の現任者講習会を修了し、かつ、②施行規則附則第6条で定める施設で5年以上実務を経験」が条件となっています。
確かに、心理学の大学・大学院で学んではいないですが、これだけの情報だと、なぜここまでGルートが批判されるのか、まだ明確でない気がします。
なぜなら、現任者講習を受けることは必須であり、さらに、5年以上の実務経験を積んでいる、ということが記載されています。これだけ見ると、講習も受けて、実務経験も積んでいるし、大きな問題はないのでは??と思ってしまいますよね(自分は最初見たときにそう思いました)。
2.Gルートの基準は本当に緩いのか?もう少し具体的に見てみる
では、なぜ批判が強まってしまったのでしょうか・・・。
その、Gルート批判が起きた理由として、特に注目すべき点が①「施行規則附則第6条で定める施設」の基準の甘さと、②「実務経験の基準が週1回以上で5年」というところがポイントのようなのです。
①「施行規則附則第6条で定める施設」について
まず、施設の基準について詳しくみていきます。
定められた施設というのは、何でもかんでも受け入れているわけではなく、分野施設コード一覧というものが存在しています。
そのなかのコードにあてはまる場合には、受験資格となるようです。
分野施設コードを詳しくみていくと、全部で27個のコードがあります。例えば、市町村保健センターなどの公的機関もあれば、病院などの医療機関も含まれています。
そして、なかでも特に批判の対象となっているのは、コードのなかの「902」であると思われます。
「902」は、「施行規則第5条第1号から第25号までに掲げる施設及び上記の施設(分野施設コード901)のほか、法人又は個人(原則として税務署に開業の届出を行っている者に限る。)が法第2条第1号から第3号までに掲げる行為を業として行っていることが客観的に明らかである場合は、当該施設(私設の心理相談室等)」と定められています。
税務署に開業届をだしており、公認心理師法第2条の1~3号の業務を試行していたことが明らかである場合には、「902」で認められるようです。具体的には、私設の心理相談室などが含まれるようです。そして、この「902」であると認定されるには、以下のような提出書類が必要です。
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ちなみに・・・法第2条第1号から第3号の業務とは?
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
これら3つの業務を行っていることが、証明されないといけないみたいです。
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さて、小難しい話が多くでてきましたが、ここまでをまとめると・・・
区分Gの「902」にあてはまる施設においては、
現任者講習をうけ、①実務経験証明書、②開業届の控え、③会社・法人登記簿謄本において公認心理師法第2条の1~3号の業務が行われていたという記載の写しさえあれば、受験資格を得られるということになります。
たしかに、これは施設の代表者による決定権が強く、その提出書類さえそろってしまえば、受験資格を得られてしまう・・・ということにつながりかねない、と感じました(もちろん、しっかりと心理業務に従事している方のほうが圧倒的に多いでしょうが)。
②実務経験が週1回以上で5年という基準の甘さ
また、区分Gの「902」以外においても、これまで心理学を勉強してこなかった、週1回の実務経験のみの方々が現任者講習さえ受けてしまえば、受験資格を得られてしまうという点で、少し緩いのではないか?とも正直感じました。(専門的な知識の獲得や、トレーニングが、体制として構築されていない)
また、そういった方々に対してのフォローアップの機会も不足しているかもしれません。
そして、おそらくこれらの経緯から、
制度に向けられた批判と、Gルートを利用して受験された人に向けられた批判が出てくるようになりました。
3.Gルートそのものや、Gルート批判に関する、主の意見
少々前置きが長くなりましたが・・・(むしろ前置きメイン^^;)最後に、GルートやGルート批判に対する主の意見で締めたいと思います。
①Gルート、確かに「穴」は存在する
今回、Gルートについての事実確認を改めてしてみましたが、確かに調べてみると、
・「902」において提出書類をクリアすれば受験できてしまう点や、
・週1回5年以上の実務経験という、比較的ゆるい基準
という制度上の「穴」はあったのかなと個人的に思います。
②しかし、当事者に聞いていないのでわからない(ソースのほとんどがtwitterやネット)
ただし、上記のような穴があるにせよ、どのくらいの厳しさで受験資格を通過できた、あるいは落ちたのか?というのは、私自身、当事者の話を聞いていないので、なんとも言えません。
ソースがすべてSNSだったり、ネットだったりもするので、すべて鵜呑みにしてしまうのも危険かなとも思います。
(例えば、twitterなどで、占いを心理支援と拡大解釈して、受験資格を得てしまったという話があったりしますが、それが本当なのか・・・。もし本当だったらそれはひどいですね。しかし、根拠がないので実際のところわからないのですよね。。。)
③Gルートをひとくくりにするのは危険
そして、Gルートを受験された方々も、それ以外のルートで受験された方々も、「実力がある人」と「実力がない人」がいるのは事実です。Gルートをひとくくりに考えてしまうのは非常に危険だと思います。
特に、そういった批判が複数出てきてしまうと、
Gルート=実力のない公認心理師であるというイメージがついてしまい、心理支援を本気で学んでいる方や、これから勉強していこうと思われているGルートの方々の良い営業妨害だなとも思ってしまいました。
④twitterの性質上、批判が助長されてしまった
もうひとつ、今回なぜここまでGルート批判がひろがってしまったのか、という点についてですが、
特にSNS界隈では、twitterの性質上、その批判が必要以上に広まりやすかったのではないかと思います。
確かに、制度上の問題はあると思います。そういった制度に対する正当な批判だけではなく、攻撃の対象が「Gルートをうけた方々すべて」に向いてしまう様子もありました。
(特にtwitterって、ネガティブな発言が助長されやすいですよね。超余談ですが、SNSの種類別に抑うつ傾向や悩みとの関連を調べた研究がありますが、twitterが最も強い関連だったそうです。SNS研究 Who is mentally healthy? Mental health profiles of Japanese social networking service users with a focus on LINE, Facebook, Twitter, and Instagram)
これから公認心理師として、心理支援を本気でやっていこうと思われている方々にとっては、傷つくような発言も多々あったと感じました。
⑤資格取得してからでも、一生懸命勉強すれば良い。とはいえ甘くないのも事実。
これは私個人の意見となりますが、
よっぽど嘘をついて受験資格を得たのでなければ、資格を取得してからでも、一生懸命勉強して、クライアントの役に立てばよいと思います。
しかし、やはり心理支援の道は甘くない、というのも現実です(私ももれなく壁にぶち当たっています)。
公認心理師資格は取れたけど、心理学の知識やカウンセラーとしてのトレーニングが不十分であるという方は、基礎的な研修会に出てみることや、SV、教育分析などを特に積極的に受けてみる機会があるとより良いと思いました。
また、臨床心理士のような横のつながり(例えば大学院の同期や職場の同期など)のように、心理の情報を得られるネットワークを確立していくことも、大切かと思いました。
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今回Gルートについて、改めて調べてみました。
その結果、やはり制度上の穴はどうしてもあるので、Gルートに関して色々な意見や批判が上がって当然かなと思いました。
ただし、そのためにGルートの方々がSNS上で攻撃の対象となってしまうことは、避けるべきことだと思いました。
また経験の浅いGルートの方々も、本気で頑張りたい人がほとんどであると思うので、そういった方々に向けての研修や情報発信を、むしろ臨床心理士資格を持っている方々が率先してやっていくべきとも思いました。