こんにちは、くまねこです。
最近は日が暮れるのがだいぶ早くなりましたね。早くもまた、年の瀬が来てしまいました・・・。
さてさて、、、今回のテーマは、ちょっと臨床的なお話です。
最近、対人関係療法を書籍で勉強してみたところ、日ごろの臨床に活かせる視点が満載だったので、その概要をシェアしてみたいと思います。
日本では折衷的に、さまざまな心理療法の考えを取り入れて治療をおこなう臨床家が多いと思います。
私も、オリエンテーションを1つにしているわけではなく、どちらかといえば折衷的な立ち位置なので、ジャンル問わず、気になった心理療法はその都度勉強しています。
そのなかでも、今回は対人関係療法のなかで、勉強になったことをまとめてみたいと思います。^^
1.なぜ「対人関係療法」を学ぼうと思ったか?
心理療法がいろいろある中で、なぜ対人関係療法を勉強したいと思ったかについてですが、
本屋に立ち寄った際に、書籍が目についたからです(衝動買いです・・・)。
しかし、対人関係療法という心理療法があることは知っていたものの、具体的にどのようなプロセスで治療を行っていくかは全く知りませんでした。
ただ、「対人関係の改善」によって、症状を改善していくという治療戦略は、個人的にとても面白いし、非常に効果があるだろうなと、日ごろの臨床体験からも感じました。
うっすら興味があったところ、本屋さんでたまたま目についたのが、対人関係療法との出会いです。^^
2.対人関係療法の概要について
ではそもそも、対人関係療法ってどんな心理療法なのか。ちなみに今回は、水島広子先生著の「臨床家のための対人関係療法入門ガイド」という書籍をもとに、自分なりに要点をまとめてみました。
ざっくりですがシェアしていきますね。
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(1)対人関係療法とは
まずは、対人関係療法とは??
対人関係療法とは、「対人関係問題に対処できるようになることによって、それと連動している症状も改善する」ということが治療の骨格となります。
特に、うつ病、気分変調性障害、双極性障害、摂食障害、不安障害など、「発症と維持に対人関係が強くかかわる障害」に向いているとされるようです。
(ほとんどが対人関係に強く関わっているのでは?とも思いますが、強迫性障害や統合失調症は、今のところはターゲットにしづらい、という見解のようです。)
治療を大局的に捉えていて、個人的にとても面白い切り口だと思います。
(2)具体的なプロセス
セッションの具体的なプロセスは3期に分かれます。
①初期(3~4セッション)・・・アセスメントや治療の基礎作り。症状と問題領域のつながりを捉える。
②中期(9~10セッション)・・・問題領域(4つの分類から選択する)にとりくむ。
③終結期(2~3セッション)・・・抑うつ症状や対人関係の変化を振り返る。
シンプルにまとめてしまうと、この3つのプロセスに分けることができます。
(3)何を扱うのか
対人関係療法でターゲットになるのが、「現在の対人関係」です。
なので、精神内界やパーソナリティは治療のターゲットにはならないようです(結果的に、パーソナリティが変容することはあるようですが)。
そして、対人関係療法では、「現在の対人関係」を4つに分類し、何をテーマにするのか、1つを選びます。
具体的には以下の対人関係がテーマになります。
①悲哀・・・悲哀は、「亡くなった重要な他者との関係」をテーマにします。
正常な悲哀プロセスであれば問題ないのですが、「異常な悲哀」がみられ、それが症状につながっている場合、「悲哀」を問題領域とします。具体的には、「遅延した悲哀(否認の状態で悲哀プロセスが進んでいない場合)」や「ゆがんだ悲哀(身体症状など形を変えて悲哀が出現している場合)」に分類されます。
治療目標は、悲哀プロセスの促進、患者が新たな興味・人間関係を再確立していくことになります。
具体的には、
「亡くなった人と患者の関係を再構築すること」
「死の直前、最中、後の出来事の順序と結果を明らかにする」
「関連する気持ちを探る」・・・etc がセッションでおこなわれるようです。
②対人関係の役割をめぐる不和・・・これは、「患者と重要な他者が、互いに役割期待のズレを抱いている状態(コミュニケーションがうまくいっていない)」をテーマにします。
この問題領域では、役割期待を修正すること、コミュニケーションを変容させること、が治療目標となります。
そして、「コミュニケーション」が特に重要になります。
患者が伝えていることと、本当の気持ちがズレていることが多いので、その結果、不和が生まれます。
セッションでは、コミュニケーション分析をおこない、コミュニケーションスキルを向上させる(本音を正しく伝えられるようにする)ので、アサーショントレーニングにも少し近いかもしれません(個人的には、これが一番対人関係療法っぽいなと思いました)。
③役割の変化・・・「役割変化に適応できないことが病気に関連しているとされる場合」、この問題領域がターゲットになります。具体的には、離婚、リストラ、病気の診断など、環境の変化に伴い役割も変化する場合、テーマになりやすいです。
この問題領域では、失われたものについての受容や、新しい役割への適応を促していきます。
具体的には、新しい役割のポジティブな側面をみたり、適応するためのソーシャルサポート(重要な他者)にも注目していくようです。
④対人関係の欠如・・・「意味ある対人関係がなく、社会的に孤立を感じている」場合、この問題領域がターゲットとなります。特に、表面的には対人関係を構築で来ていても、深い関係をつくれない患者さんがターゲットとなります。
具体的には、過去の重要な関係を振り返ったり、繰り返される不適応的な対人関係のパターンを探っていきます。
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このように、「現在の対人関係」を変容させることで、それに伴い症状を改善させることが対人関係療法の中心テーマになるようですね。
そして、どんな対人関係を変化させるかは、4つの分類から、症状との関連が強そうなものをターゲットにするみたいです。
以上、ざっくりと、また私の解釈でまとめている部分もあるので、ご容赦ください・・・^^;
次の項ではこれらを読んでみた感想や、今後の臨床で活かしてみたいことについて、書いてみます。
3.読んでみた感想と、今後の臨床で活かしたいこと
まずは、読んでみた感想ですが、
意外とシステマティックに行う治療方法なんだな、と感じました。
例えば、問題領域を特定するとか、セッション数が予め設定されているとか、、、
どちらかというと認知行動療法くらい、カチッとしている心理療法なんだな、という印象を持ちました。
(超個人的にですが、カチッとした心理療法は若干苦手です・・・。)
あとは、「現在の対人関係」に焦点を当てるって言いながら、「悲哀」では亡くなった重要な他者との関係がテーマになるので、若干混乱しました。汗
しかし、患者にとっては「現在まで続いている、尾を引いている対人関係」なのだ、と捉えることもできるのかなと思いました。
また、この対人関係療法を、頭からお尻まで、マニュアル通りに実践することは、相当な訓練が必要かと思いますが、日々の臨床のなかで、少しでも取り入れられそうな視点は、多数あるなと感じました。
例えば、私自身も日々臨床をおこなうなかで、
家族関係や、職場の人間関係、友人関係などの、「現在の対人関係」に悩み、症状を悪化させる患者さんは多いと感じます。
なかでも、本音を伝えることが苦手な患者さんや、意味ある対人関係を構築していくことが苦手な患者さんは、特に多い所感です。
そういった患者さんに、対人関係スキルを向上させることや、不適応的な対人関係の改善を試みることは、非常に役立つと思いました。
不和や孤独が解消されると、症状も軽減されることが想像できます。
この、ガイドの通りでなくても、「対人関係に焦点を当てて対話をしていく」ことで、症状の軽減を目指せると感じました。
そういった意味で、「対人関係療法」を学んでみることで、非常に重要な視点を勉強することができました。
研修会などが開催される際には、ぜひそちらも参加してみたいと思いました。
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今回は、最近気になっていた書籍「対人関係療法」について勉強してみました。やはり訓練をつまないと、実践できない心理療法ではあると思いますが、日頃の臨床で取り入れられる視点は多くあると感じました。
研修会に参加できる機会があれば、ぜひ行ってみたいですね。
【雑談】先生たちに、折衷的に心理療法やってるんだよ、と言われて「折衷的にって言われても、どうやって統合していくんだい・・・?」な学生時代でしたが、経験を少しずつ積むにつれて、色々な情報を折衷的に取り入れている自分がおります・・・。学生さんや初学者の方が、ベースが無い中で統合していくのってすごく難しいですよね~。オチのない話ですが、そんなことを思いました。