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「少年期の心【山中康裕 著】」がすごい。今後の臨床にいかせそうなエッセンスを紹介。

投稿日:2022年11月4日 更新日:

こんにちは、くまねこです。

今日は、最近読んでみた本「少年期の心」について、振り返りつつ、今後の臨床にいかせそうなエッセンスなどを紹介していこうと思います。(ずいぶん昔の書籍です)

精神科医の山中康裕先生のお名前については、臨床心理士、公認心理師を目指している学生さん、また、心理士さんでしたら、一度は聞いたことがあるかもしれません。

現在80歳をこえていらっしゃいますが、現役で講演会にも登壇されています。
精神科医でありながら、心理臨床の神髄という言葉をつかわれていて、より心理士に近いお立場での臨床をされている、と私は認識しています。

学会で一度、その講演会を聴講したことがあるのですが、
クライアントさんに寄り添う先生の姿勢は、とても勉強になりました。

講演会を聞きに行ってから、山中先生の本をもう少し読んでみたいなと思い、
即メルカリで「少年期の心」を購入しました。
(正規の価格じゃなくて、先生ごめんなさい^^;)

今回は、その本のなかで、
自分が今後の臨床で大切にしたいなと思うエッセンスを拾いつつ、紹介してみようと思います。
文字だけだと、講演会で感じたような感動はなかなか伝わらないかもしれませんが、ご容赦ください。汗

1.精神療法家というものは・・・(p21より引用)

では早速、心に響いたエッセンスを紹介していきたいと思います。

一つ目を引用していきます。

『私は、精神療法家というものは、いわば、傷つき悩むクライエントにとって最後の「自由」を守る空間と時間を保証する人間の一人なのだ、と思っています。

この彼らの「自由」を守る空間と時間の保障、ということこそ、私のいう「専門性」の一つなのであり、彼らにとって、自らが立ち直っていくために、最も必要なことなのであって、ここには日常的な時間や空間との差が歴然と認められると言って過言ではありません。』

→これまで、自己表現を理解されることがなかったクライエントの、「表現の自由を守る=最後の理解者」であることこそ、精神療法家の専門性であるということは、心理士のあるべき姿勢だと思いました。

カウンセリングルームを訪れるクライエントにとって、我々心理士は「最後の理解者」なのかもしれませんね。

2.人間と人間の真剣なぶつかり合い(p38より引用)

2つ目は、場面緘黙の児童の心理療法のなかでの一節です。

『(前略)太郎は、以前と全く違って、敢然と「ボクじゃない!!」と言うことができたのです。ここには、人間と人間の真剣なぶつかり合いがみられます。(中略)神経症の治癒というものが、このケースで明瞭に認められたように、真の意味での「対決」をとおしてはじめて成就されるものでもあることを付言しておきましょう。』

→神経症の患者さんのほとんどは、感情のぶつかり合いを避ける傾向にあります。

自分の本来の感情を表現できるようになったとき、神経症は治癒してきている、といってよいのでしょうね。

3.少年期の重要さ(p212より引用)

3つ目は、山中先生の少年期に対する考えが述べられた一節です。

『精神疾患の中で最大の問題をはらんでいる精神分裂病にしても、たしかに発病するのは14~20歳の思春期ないしは青年期ですが、何もないところに突然爆発するはずがありません。その意味で、発病時期そのものだけでなく、それを胚胎し準備する「少年期」こそ問題にされるべきだというのが、私の考えです。』

『家族内に夫婦の不和とか経済的困難とかいった何らかの不安をもたらす要因が生起すれば、少年たちの心にストレートにその影響があらわれてくること、うけあいとなるわけです。本書でも明らかなように、少年たちの神経症をみていると、その大部分は少年たち自身の問題というよりは、こうした周囲の環境に影響されたもので、いわば自我の弱い立場の子どもが一番最初に「犠牲の山羊」として選ばれるわけです。』

→少年期は、精神的にも成熟していない時期です。

その時期に、十分に理解してもらえない体験や、周囲の問題の受け皿になってしまうという体験を持つことは、発達に大きな影響を及ぼしそうですよね。実際に、その後の精神疾患の発症にも大きくかかわると思います。
周囲の大人たちは、大人の体験枠でとらえるのではなく、子供たちの体験過程に寄り添って、できるだけ理解しようと努めていきたいものですね。

******

今回は、山中先生の少年期の心のなかで、特に印象に残った一節たちを紹介していきました。

講演会で先生のお話を聴いた後に読んでみると、理解しやすいのですが、なかなか文字だけだと伝わりにくいところもあったかもしれません・・・。

山中先生は、今も現役で各学会などで講演会をされているので、関心のある方はぜひ聴きに行ってみてくださいね。

【雑談】前回、山中先生の講演会を聴きに行った学会は、長野県松本市での開催でした。久しぶりに現地での対面学会に参加して、地方開催の良さを改めて実感しましたよ。
ちょうどその頃は冬でしたが、快晴のなか、広大なアルプスに雪が積もっており、非常に清々しい気持ちになったことを思い出しました・・・。
地方での開催は旅費がかかってしまいますが、やっぱり、生活圏内から離れると、すっきりした気持ちで学べるのは私だけでしょうか^^;(普段から勤勉でありたい)

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